ドリアン研修日記⑤
「感じたことは言霊になって腑に落ちる」師匠の尊敬する偉大な山伏、星野先達の本の一文です。
研修も残り1ヶ月。師匠との時間を過ごしていく中で、頭でわかったり理解していたことより現場で実際に、六根で感じていることは圧倒的に身体に染み込むと最近よく思います。やっぱり一次情報って大切です。
1ヶ月目で気づいたこと、4ヶ月あったからこそ腑に落ちたこと。日記に書けていないことがまだまだあります。
最初の頃気づいたのが、工房に物が少ないことと、1日仕事をしてもゴミがあまり出ないことです。種類を絞ってパンを焼いているので当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。でも、ぼくにとってはかなり衝撃でした。地元のパン屋さんで働いていた時と比較すると違いは明らかで、ドリアンの一週間分のゴミを前の職場ではほぼ1日で出していました。もちろん、お店によって様々だと思います。種類をたくさん焼いていてもゴミが少ないところも多いと思います。でも、ぼくがいた職場では、なんでそんなにゴミが出るのかわからないぐらいゴミが出ていました。パンも捨てていたので、そのせいもあると思います。
毎日、片付けも掃除も丁寧にやりますが、物が少ないのとそんなに汚れることもないので、時間はあまりかかりません。洗剤もほとんど必要ありません。素敵に手を抜くことで労働時間が短縮できて環境にも優しいことを、身をもって感じた瞬間でした。日々、なんとなく仕事終わりが清々しいです。
次に、「捨てないパン屋」のことです。師匠といて感じるのは、このタイトルばかりがひとり歩きをしていると感じることです。(あくまで個人的見解です)きっとこの事で有名になっていて、良い影響があることは素晴らしい事なんだと思います。
ただ、師匠の根底にあるのは、生産者さんが大切に育てたものを無駄にしたくないという強い想いです。もちろん、食に携わる人間に食材を捨てたいなんて思っている人はひとりもいないし、みんな捨てない努力をしてるんだと思います。でも、ぼくは師匠の側にいてそれを異常に強く感じます。「捨てないパン屋」は、あくまで努力の結果で、本に書いてあることは事実ですが、本に書いてあることだけでもない気がします。
もうひとつだけ。最近腑に落ちたことで、師匠の判断基準をやっと感じられるようになってきました。この為に5ヶ月必要だったとも思えます。窯に火を入れる時の薪のくべ方、グラ(炎の出る部分)の角度、発酵時間、パンの窯入れ…色んな場面で師匠が悩んでいる姿を見てきたんですが、最初の3ヶ月では何故そこまで悩んでいるのかあまり理解できませんでした。でも、ここ最近急にその感覚を感じることができるようになったんです。かと言って、ぼくの技術が急成長したわけではないんですが、研修の大切さを1番感じた瞬間でした。
きっと優秀な研修生さんは、1ヶ月くらいでそのことに気づいたのかな…と思いつつ。ぼくは、時間がかかってしまいましたが、大切なものを熊本へなんとか持って帰れそうです。
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